チャリパイ10~産業スパイにご用心~


そんなてぃーだの心配は、見事に的中した。



あゆみが9匹の金魚をすくい上げ、10匹にさしかかろうとした時である。




「あっ!!」




あゆみが持ち上げた網の上の金魚が暴れ、その衝撃に耐えられずに、ついにあゆみの網の紙が破れてしまったのだ。


「ああ~っ!惜しいっ!」


大勢のギャラリーから、ため息が洩れた。


「いやあ~♪惜しかったねお嬢ちゃん♪ハイ、金魚9匹、新記録だよ♪」


10万円の賞金を逃れた金太郎が、憎らしげな笑顔ですくった9匹の金魚をビニールに分けてあゆみに手渡した。



しかし、それでもあゆみは大満足だった。


「わ~い♪キンギョさんもらっちゃった♪」


そんなあゆみに、会場からはどこからともなく、温かい拍手が贈られていた。


「偉いぞあゆみちゃん♪9匹もすくえたら立派なもんだ~♪」



こんな人情味溢れた光景は、金太郎の店始まって以来ではないだろうか。


脇で見ていた金造も、この時ばかりは満足そうに頷いていた。


「そうじゃ、祭りはこうでなくっちゃいかん♪」