『総務課』…


「うーん…これも違う…これも違うわね…」


簡単に判ると思っていた“産業スパイ容疑者”の特定は、意外に厄介な作業であった。


「ちょっと!花水部長!普通こういうデータは、部署別にしてPCとかに入ってるんじゃないの?」


総務課で渡されたのは、何冊かに分けられた卒業アルバムのような本の束であった。
しかも、載っているのは入社の古い順で、部署ごとの分別はされていない。


「いやあ♪なんせウチは製紙会社だからね。紙を使うのは当然の事だよ♪…それに、人事異動で部署が変わる事はよくある事だから、その度に作り直す訳にもいかないだろう」


花水部長は、そう言って弁解していた。



「キャッ♪この人、イケメンだわ♪」


「コブちゃんは、何してるのかな…スパイの顔見てないのに…」


名簿の中でイケメンを探して喜ぶ子豚に、シチローが皮肉を込めて尋ねた。


「大丈夫よ!顔を見れば、『悪人』かそうでないか位判るわよ!
…そうね~この顔なんか、スゴイ悪そうよ!絶対犯罪に関わってる筈だわ!」


子豚も負けずに、名簿の中の写真のひとつを指差して、反撃をする。


そして、その写真を見た花水部長がポツリと一言……



「それは、ウチの『社長』だが…ナニカ?」


「・・・・・・」