ケーキを食べ終わったあと、彩花はお母さんから連絡が入ったとかで家に帰っていった。
お風呂に入らないといけないけど、すごく眠たい...
...ダメダメ!入らないと...!!
自分では入らないとって思ってるのに、思えば思うほど目が閉じていく。
完全に目が閉じる前、お母さんが私を呼んだ
「橙夏ー?ちょっと来てくれないー?」
「......なにー...?」
少し体を起こすのがめんどくさかったけど、お母さんが怒る前に行かないと後がめんどくさくなるもん...
お母さんのところへ行くと、お母さんはお風呂に入っていた。扉越しにお母さんに声をかける
「お母さん?どうしたの?」
「あのね、お母さん、9時にお客さんからの荷物が届くんだけど、お母さんこの状況でしょ?だから、出てくれない?」
「え、私?」
「おねがいよ。冬樹じゃ当てにならない。」
我が兄ながら、当てにならないって言われてますけど...
まぁ、確かに当てにはならないけど。
めんどくさいなぁ...
「...分かった。そのかわり、服買ってね?」
「買いません。荷物取っただけでなんで服買わないといけないの?服じゃなくてケーキとか食べ物なら買ってあげる。あとはアクセサリーね」
「えー!ケチっ!」
ほんとにケチなんだからうちのお母さんは!
服くらいいいじゃんか!
「服はまた今度ね」
「お母さんの今度は半年後ぐらいじゃん」
「そんなに待たせないわよ。ほら、とりあえず受け取ってね?」
「はぁーい...」
もう、お母さんのケチ。
私の服、もう、去年買った服ばっかだよ?
これから夏なのに、水着も買ってないし、浴衣も買ってないし。
あ、でも浴衣はお母さんが持ってるって言ってたな...
でもさすがに水着は...
そんな事をリビングで考えているといつのまにか9時。
インターフォンが鳴ったから、出ると、荷物のお届けだった。
急いで印鑑を持って玄関に行った。
「はーい」
「あ、夜遅くすみません。荷物をお届けに参りました。」
「ありがとうございます...えっと印鑑ってどこに押せばいいですか?」
この声...どこかで聞いたことあるんだけどな...
帽子をかぶった男の人はポケットから二枚紙を出した。
ていうか、この人帽子、深くかぶりすぎじゃない?
顔を見られたくないのかな?
「あ、えっと。ここに押してもらえますか?」
「はい...って、あの。この紙は?」
「あ、それは...とりあえずこの紙は後で見てください。では。」
「え、あ、はい。ご苦労さまです...」
1人混乱していると、お兄ちゃんが声をかけてきた。
「何してんの?てか、虫入ってくるから早くドア閉めろ」
「う、うん。」
なんとなくお兄ちゃんにこの紙を見られたくなくて、素早く荷物をお兄ちゃんに預け、部屋に走った。
後ろからお兄ちゃんが私を呼んだ気がしたけどそんなのは気にしない。
部屋の扉を占めると、私は握っていた紙を開いた。
「えっ...」
そうか...なんで聞き覚えがあったか...やっと分かった。
.........緑川君だったんだ。
でも、なんでここに?
ただのバイト...そう片付けるのは少し強引すぎる。
それに、書いてある内容が...
“ありがとう”
という文字と『樹』という名前だけ。
何に対してのお礼なのか、私はさっぱり分からなかった。それに、メールで言えば済む話なのに...確かに少しでも緑川君を見れたのは嬉しいけどね...
んー...余計に混乱しちゃったよ
ベッドにボフッと倒れ込むと瞼が閉じてきた。
瞼を閉じる寸前、お風呂...という単語が頭に浮かんだ。
けれど、今日一日の疲れが勝ってしまったようだ。
お風呂は明日入ろう。
宿題も明日やろう。
衣装も。全部全部。明日の自分に任せた


