昼休み。今日は彩花が予定がないということで、ゆっくりお昼を食べて、雑談していた。


「へぇ〜...なにそれ。めっちゃ進展してるじゃん」

「うん!私もビックリだよ!」

「いや、私の方がびっくりだわ。」


でも、進展したはいいものの...私にはある疑問が

「ねぇ、彩花。今日の朝、これ、加山に渡されたんだけど」

「なにこれ?」

「分かんない、でも、なんでこのこと知ってるのかなぁって」


朝からずっと聞こうとしてるんだけど、川口くんと宮間くんと一緒に居て少し聞づらい
仲良すぎるよ3人とも!!

少しは離れたらいいじゃん、トイレまで一緒なんて...
女子じゃん!


「ただの興味本位か、何かじゃない?」

「そうかな?気にすることないよね?」

「ないと思うよ、だって、橙夏のこと好きなんてありえないじゃん、あいつ彼女いるから」

「なんか少し胸に刺さったんだけど...」

「悪気はないよ!」


ごめんごめん、と手を合わせる彩花。
それにしても、確かにありえないかも
加山は彼女好きすぎるし、私のこと好きって言っても、多分恋愛じゃない、強いていうなら...女友達としてかな?


「あ、ねぇ。緑川見てるよ?こっち」

「え!?」

バッと彩花の指さす方向に視線を向けると
少し考えた後、携帯で何かをし始めた。

「...なにしてんの?緑川。」

「分かんない...」


すると私の携帯にメールが来た。
あ...

緑川君だ。

どうしたんだろう?用があるなら話しかければ...って私が焦ってる姿を見て、メールにしてくれたのかな?

優しい...!!


すぐにメールを見ると、内容は昨日のオススメの小説の話。
今日は彩花がいるから読まないけど、今読んでる面白い恋愛小説がある。
それをすすめてみると、緑川君はどんな内容か聞いてきた。

内容...かぁ...
私もまだ最初ら辺だからなぁ...
どうしよう...バッチリ紹介するから!とか言っちゃった...

少し返す言葉に困っていると、彩花が顔を覗いてきた。

「どうしたの?誰から?」


きっとこの質問はただの他愛のないものだろうけど...緑川君とメールしてるってバレたら恥ずかしくて、少し...いや、すごく顔が熱くなった。


「え?なになに?誰としてるの!?」

「べ、別に?お、お母さんだよ!」

「うっそだ〜、だって秋紀ママだったら、そんな顔しないもーん」

「... 」


少し笑った彩花は、まぁ深くは追求しないけどさ
と言ってくれた。
あ、そういえば緑川君への返信がまだだった。
とりあえず、主人公とその相手の男子の名前を教えて、プロローグの大体の部分を説明した。

すると、返信が早く、面白そうって返ってきた

やった!気に入ってもらえた!


顔をあげると、緑川君とすぐに目が合った。
私はどこを見ればわからなくなって、すぐに逸らしてしまった。
もう一度だけ、チラッと見ると
クスクスと笑っていた。

そして、すぐにいつものクールな表情に戻って、水野くんの話を聞いていた。


少しホッと安心したため息をつくと
彩花が

「加山じゃん、どうしたの?」

「いや、緑川と仲良くなった泉に突撃インタビュー?」

「なにそれ?別に仲良くなっただけじゃん...」


恥ずかしくて、少し強い口調になってしまった。

「まぁまぁ、そういうなって」

「...あ!そういえばさ、なんで加山、私と緑川君が放課後一緒にいたって知ってたの?その時部活だったでしょ?」

「え?あぁ、見たのは俺じゃねぇよ。こいつ。」


クイッと指で隣の人物を指す。
隣にいたのは


「川口くん?川口くん...帰宅部だっけ?」

「おう。だから偶然見たんだけど...やめておいた方がいいと思う」

「は?なにそれ。なんで川口がそんなこと決めるの?」

「いや、俺、緑川と一緒の中学なんだけど、いい噂聞かねぇし、女遊び激しいらしい」

最初、私は川口くんが言っている意味がわからなかった。

あの緑川君が...?
だって、全然女子と話してないのに?
女遊び激しいらしいって...信じれるわけないじゃん

「勝手に決めないでよ...川口くんには関係ないじゃん!!」


初めてこんなに好きになったのに

私は、それを否定されたように感じて、川口くんについ当たってしまった。
それからどうすればいいのか分からなくて、もうすぐで予鈴がなるにも関わらず、私は教室を飛び出した。

廊下に出たは良いものの、そこからどこに行けばいいのかわからなくなった。
後ろから誰かの追いかけてくる足音がした。川口くんだったら今は顔を合わせづらい...だからカギが開いてるっていう空き教室に来た。

そこは以外にも人の気配がしなかった。
もうちょっとサボリに来る人がいると思ってたけど...そこまで、うちの学校はサボり魔がいる訳じゃないんだ...

あぁ、私の人生初めてのサボリ記録...
先生になんて言おう...

窓際まで来た私は、壁にもたれて座った。


...なんで川口くんはあんなことを言ったんだろう
意味がわからなくて、私も勝手に当たってしまったけど...
今すぐ謝れる気はしなかった。
その時、扉がガラッと開いた。

誰か来ちゃった!!と焦っていると
聞き覚えのある声がした。

「ほんと、橙夏って隠れる場所のレパートリー少ないよね〜?」

「あ、彩花...!!なんでここに来てるの!?予鈴なるよ!!」

私が言い終わった時、ちょうど予鈴がなってしまった。

「あ、もうなっちゃったし、私もサボろうかな」

「だ、ダメダメ!巻沿いにはできません!!」

「いーの。今日くらい私もサボりたい気分だし、それに、さっきの川口の言葉も少し気になったからね」



彩花は本当に私とサボってくれるようで
私の隣にストンと座った。
少し悪い気もしたけど、やっぱり誰かとさっきの事について話したかった。


少しの間沈黙が続いた。けどすぐに話を切り出した彩花。
口調は少し怒り気味だ。

「ていうか、川口が言うことじゃないよね!!だって、川口だって噂で聞いたんだからさ、そんなの信じるなんてばっかみたい!そう思わない!?」


言ってる事はごもっともだし、すごく共感できたけど、その迫力と威圧で
ぎこちない返事しかできなかった。


「でも、まぁ分かるかもしれないけどさ。」

「え!?分かるの?」

「うん、好きな子だったらさ、守りたいって思うじゃん?悪いヤツとなんか付き合わせたくない。そう思うのは分かるんだよね」

「...え、待って。その口ぶりだと、川口くんが私のこと好きみたいに聞こえるよ?」

「そう言ってるんだもん。え?まさかさっきので気づかなかったの?」

「どこに気づく要素があった??」

「はぁ...ほんとに鈍い子だね〜橙夏は。まぁそれはどうでもいいんだけどさ、川口も悪気があっていったんじゃないんじゃない?」

「うん...でも、今すぐには会えないかな...どんな顔したらいいかわかんないし」

「それはそれでいいと思うよ。だって、まだ怒ってるんでしょ?」

「少し...ね」


話を聞いてもらえたことか、私の代わりに怒ってくれたからか、どっちか分からないし、どっちもかも知れないけど、
最初よりは怒っていないと思う。

今はどっちかっていうと、顔を合わせづらいって感じかな...


「まぁ、今日のところは謝らないでいてもいいと思うよ」

「うん...そうだね」

「じゃ、そろそろ行こっか!」

「次の授業なんだっけ?」

「何言ってんの橙夏、次はもう帰りのホームルームでしょ」


あれ?そうだったっけ?
あ、てことは、もう部活か

「あー、久々の部活よ〜私」

「今日は委員会もないんだ?」

「うん!だから、気合入れてるの!」

「もうすぐで夏休みだし、それ終わったら文化祭だもんね〜はやいな〜」

「ちょっとちょっと、その前にクラスマッチあるでしょ??そこで頑張んないと!」


クラスマッチか、そうだね...
あと1週間後にあるクラスマッチを想像して、少し楽しみになった。



教室に入ると、一番最初に目が合ったのが緑川君。
どうしたらいいか分からなくて、すぐに逸らしてしまったけど...

でも、運が悪く、次にそらした時、一瞬目があってしまった...
川口くんと。

自分の席に座ると、加山がなにか話しかけたそうにしていた。
でも、今はそんな気分じゃないし、加山も川口くんと同じように思ってたって思ったら、少し腹が立った。だから、フイッと窓の外を見た。
自分でも、感じ悪いって分かってる...

でも...嫌だったから
って、これは理由にはならないか...


窓の外を見ていると教室の扉が開いた。

「はい、席につけー、ホームルーム始めるぞ」


立っていた人たちがゾロゾロと席に座り始めた。
そして、全員が座り終わった頃、先生が口を開いた。


「はい、今からホームルームを始めるんだけど、今日は来週にあるクラスマッチの種目決めをする。」


そう先生が言った瞬間、みんなが騒ぎ始めた。
そりゃそうだろう。何の予告もなく...いや、予告があっても騒いでいただろう

「静かに。それで、実行委員の桃城と安西、進めてくれるか。種目は前に配ったプリントに書いてある。」

「分かりました。ほら、安西あんた書きなさい」


彩花の命令口調に少し笑ってしまった。
安西君は、のほほんとしていて、スポーツが得意とは思えないけど、実は陸上部のエースだ。
だから、男子のみんなから、実行委員をすすめられていた。


「では、今から種目を紹介していきます。バスケ、バレー、サッカー、バトミントン、400mリレー、ソフトテニスです。どの種目も立候補で決めていきます。まずは、バスケ、立候補したい人ー?女子、7人です。」



男子が一斉に手を挙げた。
いや、だから女子って言ってるのに..



「女子で、バスケやりたい子いないー?」


彩花が困っている...でもなぁ...去年やったし...

その時、去年同じクラスだった原田さんが手を挙げた。

「あ、原田さんやってくれるの??」

「うん、あ、でも条件!」


教卓の前の席だった原田さんはバッと後ろを振り向き、私の方をみた。
正直...嫌な予感がした。


「泉さんがやってくれたらね!」

「え...」

「じゃあ、橙夏、やってくれる?」

「...あ、うん。」


断る理由もなかったし、引き受けたけど、なんで私を指名したんだろう

うちのクラス、バスケ部いるはず...だよね?
クラスを見回すと...あれ、2人しかいない!?

私と原田さん、そしてバスケ部の宮部さんと国保さん、合わせて4人で、試合に出るにはあと1人いる。
でも、7人も絶対来ないよね...

と思っていたら


「じゃあ、バスケ、私もやります。あと二人立候補者はいませんか?」


彩花がやるって言ったことによって、あと二人も決まった。

そのあともドンドン決めていって、最後のソフトテニスを決める時、残っていたのは

「えっと...緑川と水野...だけだから。男子はあんたらに決定ね。女子は...」

「はぁ〜い!」

「...笹川さん...わ、わかった。あとは野口さんだね。じゃあ2人もお願いね」

「おっけ〜。じゃあ緑川君と水野君もよろしくねっ!」


笹川さん...??あぁ、すごい可愛くてスタイルいい子だ。
初めて同じクラスになったけど...こういう性格の子なんだ。
色々と積極的...


あ、嫌だ。
嫉妬してる。こんな事だけで、妬いてる...


「じゃあ、これで終わります。練習の期間は短いけど、頑張りましょー!」


彩花の声により場が盛り上がった。
そんなことも考えられないくらい、自分のことしか考えてなかった。