学校につくと、部長の紗由がもう来ていた。
「おはよう!紗由」
「あ、おはよう。朝から元気だね〜」
「まぁ、朝練に遅れそうで走ってきたら、めっちゃ早くついちゃって」
「だからそんなに息が上がってるんだ」
少し笑い、私たちは部室に向かった。
部室に入るとまだ誰も来ていなかった。
んー...もうすぐで夏休みだぁ...
そろそろ衣装も縫っていかないとなぁ
「あ、ねぇ橙夏。演劇部に頼まれた帽子、できたー?」
「うん!我ながらいい作品ができたよ」
「ほんとだ。その横についた羽、海賊っぽくていいね!」
でしょー、と笑いながら喋っていると
前のドアがガラッと開いた。
「おはようございまーす!早いですね!部長と泉先輩」
「おはよー!南花ちゃん」
「おはよう。そういえば南花ちゃん、この衣装のことなんだけど...」
紗由と南花ちゃんが衣装について話している最中
私は自分が作っているドレスのデザインをもう一度見直す事にした。
私は、みんなとは違って派手な感じではない。赤でも白でもない。
淡い青でイメージは海
ハイウエストのショートドレスで、全体的にスッとしている感じの衣装。
ハイウエストの部分には黒のリボンを付ける予定。
そして、ストーンなどで飾ろうと思ってる。
頭の中でのイメージは完璧なんだけど
いざ布を触ると...少し違うんじゃないか、とか不安が押し寄せてくる。だからまだ縫えていない。
夏休み...少しでも縫って、文化祭に間に合わせないと
いつの間にか部員がほとんだ来ている状態で
みんな自分の衣装や小物を作っていた。
「橙夏?やらないの?」
「ん?あ、やるやる!さぁてと!どの青にしようかな〜」
生地選びから始めるなんて少し遅れてるけど
生地をしっかりとイメージ通りにしないと狂いそうだからね!
淡い青って言っても、水色を少し濃くした版みたいな感じだから色は割とすぐ見つかった。でも、素材があんまりイメージとは違ってゴワゴワしてた。
だから、色は少し明るいけど、手触りスルっとしてる生地を選んだ。
「橙夏は大体のイメージから生地選びまでちゃんとしてるね。私は生地を先に選んであとでデザインを考えるから案外早く進むんだ」
「私はある程度決まってないと出来ないから、紗由みたいに生地を先になんて出来ないなぁ」
「そう?生地が決まればそれからどんどんイメージが湧いてくることもあるよ?」
「そうなの?じゃあ今度やってみようかな?」
「うん!ぜひぜひ」
お互いに作業をしながら会話を続けて
朝練終了の時刻に
「あー、全然進まなかったー」
「しょうがないよ、朝練の時間短いもん」
「もう少し長くしてくれないかなー?」
そうしたら、結構出来るはずなんだけど...
まぁ無理か、授業もあるしね
お互いのクラスの近くで分かれて
私は1人で教室に入った。
「あ、橙夏!おはよー」
「おはよう!彩花!はい、これ頼まれてた帽子!」
「え!もう出来たの??」
「うん!結構良く出来た気がしたんだ。」
「ありがとう!早速演劇の練習で使うね」
「でも、今日もまた会議あるんでしょ?」
「そうなんだよね...あー!忙しすぎる...」
私は苦笑いして自分の席に荷物を置きに行った。
すると隣から加山が
「お疲れさん。なぁ見てくれよ俺の彼女の写真ー」
「あ、今度は泉が餌食に...」
加山の後ろから川口くんが話しかけてきた。
餌食??
「てか、加山彼女いたんだ?独り身かと思ってた」
「へっへーん、彼女とは二年も付き合ってますー」
「すげぇよな。二年だぜ?」
「ホントだね。で、その彼女の写真がどうしたの?」
「いや、超可愛いから見てみろよ」
「え...遠慮しとくー、惚気なんて聞きたくありませーん」
「だよなぁ」
川口くんとふたりで耳に手をかぶせて聞かないそぶりを見せると
「ちぇ、なんだよ二人揃って」
「ははは、わりぃわりぃ、また今度たっぷり聞いてやるからよ」
「言ったな!?絶対だぞ!」
ふたりは笑いながらもうひとりの友達、宮間くんのところに行った。
私は放ったらかし...
まぁいっか。
ふと、二つ前の席を見ると、緑川君が寝ていた。
もうすぐで予鈴が鳴るのに...
起こした方がいいかな...?
いやでも、起こしたら悪い?
ん?どっち!?
1人で焦っていると予鈴が鳴った。
あ、先生に怒られるかな?緑川君...
と思っていたら、むくっと起き上がって
本を読み始めた。
あれ?
すぐに起きるタイプかぁ...
あ、そういえば昨日の放課後も、ちょっと私が見てただけだ起きたし...少しの違和感にも気づいちゃうのかな??
後ろからじっと見てると、緑川君は後ろをフッと見て、私に気づくと少し笑ってまた前を向いた。
...え!?
え!?えーーーーー!?
さっきの笑顔は何!?私に向けられた笑顔なのか何なのか分かんないけどキュンってしたよ!?
何あのテク!!すごいよ!!
本を読む時間、私はただただ脳内で混乱していた。
ホームルームが終わって、五分の休憩。
次の時間は.........げ!!
数学......。
一時間目から数学なんてついてない...けどまぁ、朝見たあの笑顔を思い返せばつらくない!
よしっ、と気合いを入れると隣からメモのような物が
なんだこれ??
なんか書いてあるし...
まだ休み時間だから直接いえばいいのに
とりあえず中身を見てみると
“緑川と仲良くなったんだって?”
は!?なにこれ、なんで知ってんの...
続いて私に投げられたメモには、昨日偶然見たって書いてあった。
でもそれはあり得ないはずだ。何せ、加山はサッカー部でその時はまだ練習の真っ最中。途中で抜けるなんてことは許されないだろう。
どうしてこんな嘘をつくのか
少し疑問に思ったけど、考えてもわかるわ
けないし、後で聞いてみよう。
そう思って私は前に向き直した。
その時はまだ知らなかった。
加山じゃなく、もう1人、川口くんが私のことを見ていたなんて


