家に帰ってからも、まだ夢なんじゃないかと思うくらいフワフワして...

お兄ちゃんに

「橙夏。箸の持つとこ逆。」

と突っ込まれてしまった。


それほど、嬉しかったんだ。
こんなに好きになったのは初めてで
緑川君と喋れるだけで嬉しい!

ベッドの上で転がっていると


ピコンと手に持っている携帯が震えた。


「.........緑川君だ!!」


ど、どうしたんだろう...

トークを開くと、そこには短く

“よろしく”

の文字。


ただ、その四文字だけだけど、それがまた緑川君らしくて、携帯を片手に、少し嬉しくなった。

あ、早く返信しないと...


「...よろしくねっ...と、」

そう入力して、私は、緑川君に送信した。


あれ?メールってこんなに緊張するものだったっけ?
加山とかに送るのなんてすぐにできちゃうのに...
やっぱり...


好きなんだなぁ...

って、何考えてんだろ私は!
もう寝よ寝よ...

明日も...会えるんだ...

...楽しみだなぁ





─────朝になった。

今日は少し早起きをした。部活の朝練があるからだ。
階段を降りてリビングに行くと、お母さんがご飯を準備していた。

「お母さん、おはよう。」

「おはよう橙夏。はやく顔洗ってきなさい」

「はーい...ふわぁ...」


まだ眠くて、大きなあくびをした。

洗面所に行くと、珍しく早起きなお兄ちゃんがいた。

「あれ?お兄ちゃん何かあるの?」

「ん?いや、彼女を迎えに行くんだよ。今日の朝」

「...へぇ〜。彼女って同級生なの?」

「おう。」

「彼女さんが気の毒...」

「なんでだよ。そういうお前はなんでこんなに早起きなんだ?」

「私は部活です〜」

「悲しいヤツめ」


そういって洗面所から出ていったお兄ちゃんの背中に

「悲しくないしー!!」

と返しておいた。




顔を洗ってリビングに戻ると朝ごはんはもう完成していた。


「ほら、橙夏も早く食べてね」

「うん。その前に制服に着替えてくるね」

「わかった。早く着替えてきてねー」

「はーい」


すこし小走りで階段を駆け上がり部屋に入る。

クローゼットから制服を出して着替える。

髪の毛...はいつも通りポニーテールでいっか。

今どきはメイクとかをしてくる子も多いし、彩花もしてくるけど...私は親戚の結婚式以外でしたことがない。
ていうか、仕方がわからない...
それにメイクなんてする暇ないしね


キーホルダーが二つついたカバンを持ってしたに降りる。

「あ、橙夏。今日、傘持ってった方がいいわよ?午後から雨降るって...って冬樹、髪なんかいじってないではやく彼女のとこ行きなさい!」

「お兄ちゃん、彼女さん待たせたら嫌われるよ〜?私しーらない」

「うるせぇ独り身の癖に...ってやべ!走んねぇと時間ねぇじゃん!」


それはお兄ちゃんが髪なんかいじってるからじゃん

私はゆっくりと椅子に座ってパンを食べはじめようとすると、

「橙夏もよ。もう6時半よ?」

「嘘!ヤバイ歯も磨かなきゃいけないのに...」

「ゆっくり食べてないで詰め込みなさい。」


詰め込めって...



私は仕方なくいつもより倍の速さで食べて、牛乳で流し込んだ。
そのあと歯を磨いて

「いってきまーす!!!」


と大きな声を掛けて家を飛び出した。