放課後になって、中庭を訪れると

「え〜?ないー...」


ここにあると思ってたのに...何でないの...?
ベンチの周りを一生懸命探したけど見つからなかった。

もしかしたら、誰かが見つけて先生に届けてくれたのかも!!
そう思った私は急いで職員室に向かった。




「え?そんなの届いてないけど...携帯、無くしたのか?」

「そうですか...いえ!大丈夫ですよ!大丈夫!多分カバンの奥底に入ってたりするんで」

「カバンをなんで最初の方に探さないんだよ」


先生が呆れたようにそういった。

「あれですよ、忘れてたみたいな」

「これだから忘れん坊泉は...早く見つけて、帰りなさい」

「はーい!ありがとうございました!」




職員室を出て、教室に向かった。

あーもう...なんでないの...
お母さんにすごい怒られるじゃん...
しかも学校でなくすなんて...

はぁ〜...


教室のドアを開けると、中にはのひとり、男子がいた。
寝てる...?
起こさないようにそっと歩いている最中、あることに気がついた




その席緑川君の席じゃん!!まさか緑川君が寝てるの!?

ちょっとの時間、様子を見ていると


「ん...あれ?」

「わ!ご、ごめんなさい!起こしました??」


急にむくっと起きて周りを見渡した緑川君。

「いや、大丈夫。てか、あいつ見なかった?」

小さな欠伸をしてそう聞いてきた。


「あ、あいつ?」

「あ、翔のこと。」


水野...君かな?


「見てない...です」

「あいつ...先帰りやがった...あ、そう言えばさ」


緑川君がこっちを見て喋りかけてきた。
うわ、なんか緊張する...


「この携帯に見覚えない?」

「...あ!私の携帯!ど、どこにありました??」

「中庭。昼通ったら、ぽつんって置いてあったらしいよ。翔が持ってきて、俺、この携帯見覚えあったから渡そうと思って」

「そ、そっか...良かった〜...あ、ありがとう!緑川君!」

「いーえ。」


わそのあと...つながる言葉が見つからなくて、シンとした時間が続く。

何を喋ろう...何を聞こう...


「み、...緑川君!あの、えっと」

「なに?」

「どうして、この携帯に見覚えあったの?」

「あぁ...昼さ、桃城さんがどっか行ったら、いつも携帯見てるでしょ?何見てんのかなーっていつも思っててさ、それで」

「そうなんだ...」


て、見られてたってこと!?

うそ、変な顔してなかったかな!?
どうしよう!絶対してたよ!


「ねぇ、いつも何見てるの?」

「えっと...小説かな?いろんなジャンルの携帯小説を読み漁ってる...ていうか...あはは」

「小説好きなんだ。俺、文字多いの苦手でさ。漫画の方がすき」

「私もマンガ好きだよ!小説は、ほとんど会話文を見てる感じだし...読み始めるときっと緑川君でもハマると思う作品も多いよ??」

「そう?じゃあ今度教えてよ。オススメ作品」

「え、...うん!任せて!バッチリ紹介するから!」

「おぉ〜頼もしい〜」



あ〜夢見たい...緑川君とこんなに喋れるなんて...
彩花に報告しなきゃなぁ〜


と、のんきに考えていると、緑川君が爆弾を投下した。


「あ、泉さん。LIME、交換しようよ」

「...え!?」

「あ、ごめん、嫌だった?」

「い、嫌じゃない...です...お、お願いします...」

「うん。QR俺が読み取るね」

「うん...!!」



やった...緑川君と交換できた...!!

喋りかけるのさえもできなかった私が!!
成長したよ彩花ー!!


心の中がパレードのような、テンションの中、怪しまれないように平然を装う。


「はい。交換完了。これからよろしくね。泉さん」

「こ、こちらこそだよ!緑川君」

「じゃ、俺帰るわ。また明日」

「うん!また明日...!!」



あーもう!
こんなに普通に会話できるなんて!

ていうか...これってもう...
完全に緑川君にハマってるじゃん...


でも


ほかの人じゃない...
こんなに好きになったのが


緑川君で良かった