恋変。〜恋して変わる。〜


「ゴホッゴホッ...あー...」



9時42分。本当だったら学校にいる時間。
でも今日の私はお家に待機。
待機というか閉じ込められているというか。


朝8時に、お母さんに起こされて、遅刻だって焦りながら立ったんだけど、そのまま床にバッタンと倒れたらしく、学校には休むという連絡をしたってお母さんからさっき聞いた。
38度5分の熱があって、咳が出るっていうthe風邪。

めったに風邪なんてひかないんだけどなぁ


まさかのクラスマッチ目前なのに。
みんなにほんとに迷惑をかけることになる。

まるで昔の私のように。


小さな出来事のようだけど、その根は私の心の奥深くまで張り巡らされていて、私にいつまでもまとわりつく。


やめてって言えなくて
ずっと、溜め込むことしかなくて

私は笑うことしかしなくなった。


ヘラヘラしてる?

そうだよ。
私はそれしかできないんだから。




「...なーんちって。」




何考えてんだって。1人で悲劇のヒロインぶって。

私、女優になれるかもなぁ


「って、お母さん私に飲み物も渡さずに行ったの?」

お母さんは買い物に行くって言ってさっき家を出た。
お母さん...飲み物くらい置いていってよね...

階段を下りながら私はそう思った。


「もう元気じゃん私」


普通に歩けるし、朝のぶっ倒れ事件は一体何だったんだろうって疑問なくらいだよ

リビングに来て、冷蔵庫を開けると、スポーツドリンクが2本入っていた。そのうちの一本をとってもう一度自分の部屋に戻る...
はずだった。だけど、運悪くインターフォンがなってしまった。
誰だろう...こんな時間に来るって事は宅急便?でもこんな格好で出れないよね...
仕方ない...なんか羽織ってくるか...

インターフォンを覗いてみると、そこにはお兄ちゃんが立っていた。

え?なんでお兄ちゃん?
学校は...
あ!早く開けに行かないと


急いで玄関の扉を開けるとお兄ちゃんの頭に直撃してしまった。

「いっ...て...急に開けんなよ馬鹿が」

「ご、ごめん。で、でもなんでこんな時間にお兄ちゃんが?サボリ?」

「んなわけあるか。今日は提出しに行っただけで帰ってくる予定だったんだよ。」

「あーそーなんだ。」

「聞いといて興味無さそうなんだな、まぁいいけど。てか、熱あるんじゃねぇの?寝とけよ」

「んー、寝たら少し治ったみたいだから大丈夫。」



そっか、とお兄ちゃんはリビングに向かって歩いていった。
私もペットボトルの水滴をぽたぽたと落とす前に部屋に行かないと...

少し駆け足で階段を登りきった


「はぁ...疲れた。」


特に何もしてないけど
本当に何もしてないけど疲れた
クラスマッチ間に合うかなぁ?

バスケなんて、私がいなくてもいいんだろうけど、やっぱり最後のクラスマッチ...出たいんだよね
出たところで迷惑をかけるだけ、なんてお母さんには言われるだろうな...

うーん...今から説得できるように考えておこう...