幻のような夢を見た。



黒い日傘をさした由美子が黒い衣装を着て前を歩いている。



ピンヒールがカツンカツンと鳴って・・。



俺は由美子に駆け寄ろうとするのに全く追いつけない。



足が思うように動けずもつれて転んでしまった。



地面に這いつくばった俺に



「大丈夫?」



と女の声が落ちてきた。



俺が顔を上げると、赤い服を着た由美子が俺を見下ろしていた。



「由美子・・?美蘭・・?」



と俺は聞いていた。



首を傾げた赤い由美子(美蘭)が



「私は椿(つばき)だけど?」



と答えた。



はあ??と俺は頭が混乱した。



そして赤い椿はぼうっと薄くなってきた。


俺は慌てて体を起こして「待って!」と叫んでいた。



その自分の声で目が覚めた。



部屋の中は太陽がこれでもかと燦々と日光を差し込み眩しかった。



「やっと起きた」


と由美子の無邪気な声。



俺はのっそりとベッドを降りた。