俺の早鐘のように鳴る心臓の音が由美子には子守歌のように聞こえたのか、


すやすやと寝息が聞こえてきた。



俺はそっと体を離し由美子の顔を覗いた。


薄暗い中、顔の半分は髪の毛で覆われていた。



気が付けば雷雨も止んでいてシンとしている部屋。


(ああ、だから由美子は眠れたのか)


なんて思いながら俺はそっと由美子の顔を覆っている髪をよけた。



陶器のような肌。


長いまつ毛。



妖艶でも、無邪気でもない”素”の由美子の顔が見えた。



俺は人差し指で軽く由美子の頬に触った。


ぷにっと軽く押して、すーっと指を滑らせた。



起きない。


よく眠っている。


その寝顔は清らかで儚い白い花のように見えた。



少し開いている唇も指でなぞった。


(柔らかい・・)



キスをしたい衝動をどうやって抑えたのか。



それは安心しきって眠る由美子の無防備な寝顔が俺の欲望にストップをかけたから。





このまま寝かせてあげよう・・・と俺も目を閉じた。