黒い日傘をさした女

ボーイがシャンパンを運んで来た。


空いたお皿を下げ、テーブルに氷にささったシャンパン3本と


シャンパングラスを置いて一礼して部屋を出て行った。



由美子は椅子にもたれ足を組んでいた。



(バスローブ姿を見られても平気・・な女か)


と俺は思った。


きっとこういう事に慣れているんだろうと思うしかなかった。



俺はシャンパンを取りグラスに注いだ。


「あら、ごめんなさい」


と由美子は慌てて言った。


「ご馳走になるからね」


と俺は笑顔で答えた。



由美子はグラスを持って


「乾杯」


と言おうとした。


でも俺が手を引っ込めた。



ん?と小首を傾げて由美子は俺を見た。



「乾杯の前に由美子さんのほんとの名前教えてよ」


と俺は甘えるように言った。


「ほんとの名前?」


と由美子は目をパチクリした。


「そう。由美子、美蘭、どっち?」


と俺は問い詰めるように聞いた。


由美子はグラスを揺らして


「雅也の前では由美子」


と答えた。


どっちでもいいじゃないって顔をしている。



「どうして俺にも美蘭って名乗ってくれなかったの?」


と俺は聞いた。


「はあ?」


と由美子は答えた。



「追っかけやってる子も美蘭って呼んでた。


 仕事でも美蘭なんでしょ?


 どうして俺には由美子なの?」


と疑問をぶつけた。



「それは・・」


と由美子は照れたような顔になって


「つい、本名言っちゃったの」


とニコッと笑った。


その笑顔がとても可愛らしくてそれ以上何も言えなくなってしまった。


「私ね、蘭の花が好きなの。仕事でもよく使うの。


 花言葉はね「純粋な愛」とか「美しい淑女」とか「優雅」って言うの。


 素敵じゃない?」


と愛くるしい笑顔で答えた。