俺は少し距離を空けてその女の隣に座った。



日傘の中から黒くて長い髪が垂れている。



(顔・・どんな顔してんだろ)



とチラッと彼女を見た。



でも日傘に隠れて見えない。



その時携帯電話が鳴った。



見ると彼女の奈緒子からだった。



『ごめーん、急用が出来て行けなくなった』



と奈緒子のかん高い声が聞こえた。



「わかった。じゃね」



と俺はすぐ電話を切った。



来れなくなった理由なんか聞かない。



今は隣の黒ずくめの女に興味がある。



俺はちょっと距離を詰めて


「おねーさん、涼しい所でお茶しませんか?」


と声をかけてみた。



日傘が上に傾いて、女の顔が見えた。



視線が合った時、俺はゾクッとした。



白い肌に大きな瞳。紅い唇。



彼女はポカンとして俺を見た。


まるで、私に言ってるの?っと言ってるみたいに。



俺は慌てて爽やかな笑顔を向けて、



「暑いでしょう?」



と言った。