黒い日傘をさした女

俺は放心したように由美子の前に座った。



(これが・・由美子・・?)



あまりにも雰囲気が違いすぎた。


目の前にいる由美子はピンク系のメイクをして清楚なワンピースを着て座っていた。


妖艶さは無く、ただ清楚な雰囲気が漂っていた。



ウェイトレスが水を運んできたので俺はアイスコーヒーを注文した。


そして水を一気飲みした。



「すごい汗ね。これ使って?」


と由美子が白いレースのハンカチを差し出した。


今日の由美子は”白”。


ネイルも白にブルーの粒が光っていた。



「・・見違えたよ」


と俺はやっと言葉を口にした。


そしてハンカチを受け取った。


これは絹のハンカチだ。


汗を拭くのにはもったいない気がした。


俺はハンカチをテーブルの上に置いておしぼりで汗を拭いた。


それを見て由美子は、


「そのハンカチあげる」


とニッコリ笑った。


「え?でも」


「それね、蘭の刺繍がしてあるの。私だと思って?」


と由美子はすかさず言ってきた。



「・・じゃあいただきます」


と俺は答えた。



(私だと思ってって、どういうつもりだ?)


と複雑な心中になった。


「そうだ、慌てて来たから日傘忘れた」


と俺は言った。


由美子は目をパチクリして


「おっちょこちょいね」


とコロコロ笑った。



この笑顔はあの時の由美子だ・・と思った。



「ごめん」



「いいのよ。この次お願いね?」


と由美子は笑顔で答えた。



今目の前にいる清らかな由美子には黒の日傘は似合わないと思った。