「買い出しは要らないよ、私の両親が適当に用意するから、欲しいもの言ってくれたら買っとくよ」
「悪いな、大人数で押しかけるのに」
「平気、大騒ぎしすぎるとご近所に怒られるかもしれないけどね」
貴一と渚ちゃんの話を聞いていて気が付いた。
「もしかして渚ちゃんの家から花火観るの?」
尋ねると渚ちゃんはにっこり笑って頷いた。
「うん、私の家の屋上からよく観えるの、いい思い出を作りたいから……今年が最後でしょう?」
「そっか……最後だね」
この夏休みの花火は高校生活で最後。
みんなの進路は良く知らないけれど、きっと離れていくと思うと寂しい。
貴一に直接進路を尋ねたことはないけれどどうするんだろう。
私自身まだ定まっていない。今はただ少しでも選択肢を増やすためにとりあえず勉強してるだけ。
「最後って言うなよ、高校生では最後かもしれないけどこれからも続いていくだろ」
しぼんでしまいそうな空気をすっぱりと断ち切ったのは貴一。唇を尖らせてジュースのストローを咥えて、渚ちゃんと私を見据えて言い聞かせる。
そうだ、まだ最後じゃない。

