「花火、観に行く?」


いきなり投げかけられた高校三年生の夏休み。
私たちの高校生活で三回目の夏休み。大学受験を控えた私たちが本気を出して、必死になって頑張らなきゃいけない夏休み。泣いても笑ってもこれが最後の夏休み。


そんな大事な時期に花火を観に行こうだなんて、いったい何を考えているんだろう。


一種の現実逃避というものか、暑さで頭の中が蕩けてきたのかもしれない。と思いながらも私だって四六時中勉強のことばかり考えてるわけじゃない。
とりあえず周りに溢れている『勉強』の言葉に押されて私も勉強しなくちゃいけないと、気持ちを戦闘モードに切り替えようとしているものの、あいにく体はついてきてくれない。


だって、この連日の猛暑じゃ……何にもする気にはなれない。


「なんで?」


ぽろっと口から零れた言葉はすっかり暑さにやられてる証拠。行きたい、行きたくないという気持ちはさておき。


気になるのは貴一の反応と真意。