「驚いた?でも話かけてるのはあなたの分身のワタシよ。あなたが毎日、鏡の自分の姿を見て話しかけるから、あなたの強い怨念が悪霊となって私を生みだしたの」


「怨念?悪霊?」


「そう。そんなに隼人が好きなら奪っちゃえばいいのに。家も隣なんだしさ」


「それが出来たら苦労しないわよ。隼人の前だとドキドキしちゃって上手く話せなくなる」


「だったら……私があなたに乗り移って麻友から隼人を寝とってあげる」


寝とる……


「私に乗り移ると私の意識はどうなるの?」


「会話をするのも体を動かすのも私、だけどあなたの意識はちゃんとしてるし目だって見える。まぁあなたの体を借りて、私が動くだけだけどね。どう?試してみる?」


「でも……少し考えさせて」


「わかった、また話したくなったら鏡の前に座ってね?」


そう言うとまたいつもの鏡に戻った。
今のはいったい何だったの?
私は夢を見ていたの?


不思議な感覚に襲われながらも私は一度部屋を出てキッチンに向かった。


私の両親は二ヶ月前にお父さんの海外の転勤が決まり、一年間アメリカに行く事になった。
お母さんはアメリカに着いて行く事にし、私は学校もあるし、隼人の側から離れたくなくて残る事にした。
だから夕食はいつも一人で作っている。
一人分の料理を作り、それを食べるとお風呂に入った。


お風呂から上がり、自分の部屋に戻る。


部屋の窓を開け、外の空気が部屋に流れこむと気持よかった。