何度でもあなたをつかまえる

かほりも釣られて、ほほ笑んでから……ふと気づいたように尋ねた。

「よく席取れたわね。飛行機、いっぱいだったでしょ?……この時期、日本人も多いし、今回は一緒に外を出歩かないほうがいいんじゃない?」

でも、雅人はハハハ……と、乾いた笑いの後に、肩をすくめた。

「ごめん。時、既に遅し。週刊誌に出ちゃった。俺がボストンでゐねと歩いてる写真。」

「え!?バレちゃったの!?大変!!」

かほりは慌てて周囲を見渡し、ゐねを探した。

「いや。バレてはいない。……誤解、だな。若い恋人との海外旅行って見出しで記事を書かれたから。こっちの留学生か旅行者が撮影した写真を出版社に売ったみたい。……事務所が否定コメント出したからそのうち沈静化すると思うけど。」

……それって……事実確認せず、掲載したってこと?

酷い話。

てゆーか!

「……恋人は、私じゃなくて、ゐねなんだ……。ふーん……。そう……。」

ぷくっと、かほりは頬を膨らませた。

でも、雅人はうれしそうにかほりの膨らませた頬にキスした。

「またヤキモチ焼いてるの?馬鹿だなあ。……かわいい!」

……かわいいって……そんな歳じゃないのに……。

そんな風に思いながらも、悪い気はせず、かほりは頬を染めてうつむいた。


「……何だ。お前。若い恋人じゃなくて、とっくに離婚した嫁といちゃついてんのか。いい歳して、じゃらじゃらと、よくまあ、恥ずかしげもなく……」

雅人を見つけた東出が、いそいそとやって来た。

……既に雑誌のことを知っているらしい。

「こんにちは。東出さん。情報早いね。アメリカにも、日本の週刊誌売ってるの?」

「いや。Twitterで読んだ。……恋人じゃなくて娘だと公表したら、大騒ぎだろうな。……せっかく来たなら、お前も何か演奏してみないか?」

東出はからかいにやって来たのではなく、雅人に演奏を促しに来たらしい。

「えー。楽器持ってきてないもん。……じゃあ、歌おうか?」

雅人の提案を東出は鼻で笑った。

「却下。……楽器なら腐るほどあるぞ。借りればいい。来い。」

「……俺、かほりと話してるのにぃ~~。強引だなあ……。」

ぶつぶつ文句を言いながら東出に連れられて雅人は楽器を借りに行った。


驚いたけれど……思わぬご褒美気分だわ。

雅人に会えただけじゃなくて、演奏も聴けるなんて……。

かほりは、これから自分が弾く緊張も忘れてうきうきし始めた。