何度でもあなたをつかまえる

思えば、いろんなことがあった……。

たぶん、これからも、驚くこと、呆れること、ガッカリさせられることがいっぱいあるのだろう。

でも……。

雅人が好き。

そして、雅人が私を好きでいてくれる限り……2人は何も変わらない。

何度仲たがいしても、何度別れても、何度でもこうして抱き合って仲直りする。

それが、私たちなのだろう。


「どちらかが、病気になったり、身体が不自由になったら、再婚して一緒に暮らそう。」

何を思ったか、雅人がそんなことを言い出した。

「それって、介護?」

笑っていいのかよくわからず、かほりはそう尋ねた。

「……結果的にはそうなるね。」

うなずいてから、雅人はかほりを抱く腕に力を込めた。

「でも、そう思っていたら、老いも病も怖くないだろ?」

……そうきたか。

「そうね。……夢のあるんだか、ないんだか……よくわからないプロポーズだけど……うれしいわ。」

くすくすと笑って、かほりは雅人の胸に頬をすりつけた。







翌年の花見は、日本だけではなく、ボストンの桜も愛でることができた。

東出の紹介で、かほりは庭の桜を愛でるサロンコンサートにチェンバリストとして招かれた。

「パパも来れたらよかったのにね。」

かほりの髪をコテで巻きながら、ゐねがつぶやいた。

「春のライブツアー中ですもの。無理して体調を崩したら大変。もう若くないんだし。」

慌ててそう言ったけれど……かほりは、少し不安になった。

……そういう……無茶なことを平気でしちゃうのよね……。

思えば、ゐねの渡米の際も、かほりはゐねに同行してすぐに帰国したが、雅人はオフ期間にかこつけて1ヶ月間に何度も日本とボストンを往復していた。

さすがに、ツアーの準備が始まってからは我慢しているはずなのだが……。

「来たくても来れないよ。ゴールデンウィークだもん。飛行機空いてないって。」

ゐねが残念そうに言った。


ボストンの春は遅い。

4月末にやっと桜が満開になるので、ちょうどゴールデンウィークに突入した日本人観光客もやってくる。

「そうね。……ゐねと桜の写真、いっぱい撮って送ってあげて。」

「ママの写真もね。……はい、出来た!かわいい!見て!」

ゐねに促され鏡をのぞくと、普段は地味なかほりが確かにゴージャスに見えた。