何度でもあなたをつかまえる

IDEAのクリスマスライブは、教会のクリスマスコンサートとは似ても似つかなかった。

耳が痛いほどの大音量と、地鳴りするほどの大歓声、まばゆい熱いライトの中で、雅人はキラキラした笑顔で演奏し、歌っていた。

20年以上、辛苦をともにした大切な仲間との輝かしい栄光を心の底から楽しんでいるようだ。

MCではファンのみんなへの感謝、スタッフへの感謝、そして家族への感謝を述べた一条が、真面目な話のオチとして、最後に独身の雅人をいじった。

雅人は、いつも通りヘラヘラ笑っていた。

ゐねは、そんな父を複雑な気持ちで観ていた。

千尋がそっと手をつないだ……ゐねが泣かないように力を込めて。



アンコールは静かに始まった。

アカペラでThe First Noel。

3人のハーモニーは、ノエルにふさわしい敬虔なものだった。


そのまま、茂木がチェロを弾き、雅人はバロックオーボエを吹き、一条はリュートを爪弾いた。

むしろ賑やかな自分たちのヒット曲を、クラシカルなアレンジでしっとりと演奏し、歌い上げる。

自然と涙があふれた。



終演後、ゐねはすっかり魂が抜けたらしい。

「……もっと早く、IDEAのライブに連れて来てあげればよかったかしら。」

からかうようなかほりのつぶやきも、ゐねの耳には入らない。

……スピーカーの大音量で耳がおかしくなってるのも理由のひとつかもしれない。

「いや、マジで感動しました。さすがに20年以上続いてるだけのことはありますね。」

千尋も興奮気味にそう言って……それから、小声でかほりに尋ねた。

「これからも、ずっと隠すんですか?……いっちゃんの存在。……それに……かほりママ、結婚し直さないの?」

かほりは苦笑して、それからおもむろに周囲を見渡した。


充実感と笑顔、汗、そして涙……。

どの顔からも極度の感動と興奮がうかがえた。

広い広いコンサートホールを埋め尽くす熱心なファンの想いを裏切りたくない。

……それが、かほりの正直な気持ちだった。


「それが自然かなあって、今は思ってるわ。」

すると、千尋は納得できないらしく、少し強めに言った。

「不自然ですよ!いっちゃんがかわいそうだ。ずっと……世間的になかったことになってるなんて……。」