何度でもあなたをつかまえる

「ゐね?……泣いてるの?……千尋くんと一緒じゃなかったの?」

「ゐねっ!?どうしたっ!?」

教会の控え室には、かほりだけじゃなく……なぜかジャージの雅人もいた。


「……何でいるの?……パパも……ライブでしょ?」

毎年、クリスマスイブはIDEAは東京でライブを続けている。

かほりの教会コンサートが終わった後、ゐねは初めてIDEAのライブに行く予定だ。

……本当は、千尋の分のチケットもあるのだが……会場前でチケットを捌こうかしら。


「うん。ライブ。でもまだ時間あるし。毎年、リハの前後に抜け出してかほりの教会コンサートに来てんの。滝沢さん黙認。ね~。」

雅人とかほりは、顔を見合わせて、ほほ笑み合った。


知らなかった……。

ゐねだって、かほりの教会コンサートには、毎年ではないものの、何度も来ている。

顔を合わせないようにしていたのだろうか。


「……仲、いいのね。……いいなあ。」

ゐねはそうつぶやいて、ホロホロと涙をこぼした。


オロオロするかほりを係の人が呼びに来る。

出番が近いようだ。


「大丈夫。行っておいで。ゐねと2人で聞いてるから。」

雅人はかほりにそう言って、泣いてるゐねの肩をそっと抱いた。

ゐねは、甘えるように雅人の胸に頭を預けた。




「……千尋くんに……振られた?」

雅人はゐねの頭を撫でながらそう聞いた。

「……わかんない。」

ゐねはそう答えてから……ぽつりと呟いた。

「ちろが……私を裏切るなんて……考えもしなかったの。……結局、人間って独りなのね。」


おやおや、と雅人は眉をひそめた。

「そっか。そりゃショックだったろうね。……でも、かほりも千尋くんを裏切ったこと、あるだろ?」

「……どうして……」


どうして、知ってるの?

ゐねは驚いて、雅人を見上げた。


雅人はちょっと笑って、ゐねの涙を指で拭った。

「……人間は独りだよ。そう自覚してからのほうが、側にいてくれるヒトに感謝できるし、大切にできると思う。……取り返しのつかなくなる前に気づけて、よかったね。」

逆説的で驚きはしたものの、ゐねは妙に納得して、うなずいた。