何度でもあなたをつかまえる

その年のクリスマスイブ。

アメリカから休暇で帰国した千尋を、ゐねは空港で出迎えた。

「いっちゃん!びっくりした。わざわざ来てくれたんだ。」

千尋はうれしそうにゐねを抱きしめた。

離ればなれになってから8ヶ月。

久しぶりに逢った千尋は……何だか日に焼けて精悍になったようだ。


「……ちろ、痩せた?」

ゐねは、そっと千尋の頬に手を当てた。

縦に筋が入ってる……。


千尋は、ゐねの白い指を大切そうに捉えて口付けた。

……うわっ。

こんな……人がいっぱいいる空港で、こんなことする人じゃなかったのに……。

アメリカナイズされたのかしら。


「うーん、そうかも。食事が合わなくて。水が合わないってより、油と糖分過多がつらくって。菜食主義者みたいな食生活だよ。いっちゃんも覚悟しときなよ~。」

そう言って、千尋はゐねの手を取ったまま歩き出した。

映画のように自然にエスコートする千尋に、ゐねは違和感を覚えた。

アメリカナイズ……だけじゃない……。

これって……女扱いに慣れたのよね。

「ガールフレンドできたでしょ。」

ゐねは、カラリとそう尋ねた。


千尋の動きが止まった。

血の気を失った顔を見て、……ゐねは確信した。


ドクン!と、自分の心臓が飛び跳ねた。

……胸が……痛い……?

自分でも驚くほど、ゐねは動揺し、傷つき……途方に暮れていた。


でも、それは千尋も同様……いや、それ以上だろう。

瞳孔が開き、真冬なのに変な汗が出てきた。

「……ご、ごめんっ!」

千尋は慌てて頭を下げた。


……そんな馬鹿正直に認めなくても……。

ホロリと、ゐねの瞳から涙がこぼれ落ちた。


「わ!いっちゃん!泣かないで!ごめんっ!……その場のノリって言うか……酒の勢いというか……浮気とか、心変わりとかじゃないから!好きなのは、いっちゃんだけだから!」

「……嘘つき。……つきあってるんでしょ?」

でなきゃ説明がつかない。

一夜限りの関係にしては、エスコートし慣れすぎている。


立ち尽くした千尋に、ゐねは言った。

「ママのコンサートに遅れたくないから、行くわ。」

それだけ言って、ゐねは駆け出した。


千尋が、ゐねを呼んでいる。

けど、今は……独りになりたかった。