何度でもあなたをつかまえる

ゐねが生まれて3年。

かほりは、雅人の衣服に女性の残り香を感じるようになった。

……浮気の虫が騒ぎ出したのだろうか。

折悪く、かほりは東出の主催するオケの客演が決まり、猛練習中。

浮気の真偽を確かめる時間も、心の余裕もない。


東出のコンサートが終わったら……身辺調査をして、相手の女性と会って……。

考えると、ため息が出てくる。


……また……雅人の浮気の尻ぬぐいをしなければいけないのか……。

自分で、何とかしてくれたらいいのに……。


ともすれば鬱々としそうな日々を、かほりはチェンバロと、愛娘の笑顔に癒やされて、何とか平穏を保った。


かほりが何も言わないことをいいことに、雅人は、次第に帰宅が遅くなり……帰宅しない夜が少しずつ増えてきた。

見かねたりう子が、かほりのいないところで、雅人に注意した。

「浮気とか、そんなんじゃないよ。」

と、雅人は、否定した。

だが、雅人が仕事と家庭以外の何かに心を傾けていることは明白だ。

浮気じゃないと言われても、これまでの雅人のだらしなさを思い起こすと、信じられるわけがない。

今は何も考える余裕がないかほりに代わって、りう子は雅人の行動を調べさせた。


例えば、特定の浮気相手ができたのなら、別れさせればいい。

本気で恋愛してるというなら、離婚も視野に入れて弁護士と相談する必要がある。

かほりと違って、サバサバしているりう子は、事実を追求した。

その結果、ただの浮気や不倫ではない……もっと深刻な事態にあることを知った。


雅人は、政財界のバカ息子や、芸能人の子弟といった、裕福だがモラルの欠如した連中に誘われて不道徳な集まりに参加していた。

合コン、乱交、ドラッグパーティー……。

どこまでが真実がわからないし、雅人がどこまで参加しているかも決めつけられない。

しかし、放置しておけない。

かほりのためだけじゃなく……IDEAのためにも。


りう子は、証拠を揃えた上で、再び雅人を追い詰めた。



「……まあ……奴らがメチャクチャやってることは知ってるけどさ。さすがに俺は、そこまでやってないよ。……変な病気うつされたくないし、乱交にも参加してない。」

まるで悪戯がバレた子供のように、雅人はしょんぼりしていた。