甘い恋じゃなかった。






「でも…何でやめちゃったんですかね?」



「…さぁな。アイツからバレーボール取ったら何も残らねーよ」



「…そういえば桐原さんって、高校時代は何部だったんですか?」



「…は?」




あ、なんか今物凄く嫌そうな顔した。




「何で突然俺の話なんだよ」


「いや、何か気になって。やっぱり調理部とかですか?」



桐原さんはきっと、高校生の頃からケーキ作るのが上手だったんだろうなぁ。



私は脳内で高校時代の桐原さんを思い描く。



そうだなぁ、場所は放課後の調理室。


ブレザーの制服姿で、オーブンを覗き込み、ケーキの焼き具合を確認する桐原さん。上手い具合にいったのだろう、彼の口元に、ふ、と微かな笑みが浮かぶ。


それを窓の外から見ていたギャラリーたちは見逃さない。




『キャーッ!キララ王子今、笑った!?』


『いつもは仏頂面なのにケーキには笑いかけちゃうなんて…!』


『ケーキ好きすぎかよ!マジ、卍~!』




思わず緩みそうになった口元を慌てて隠すと、前方から何やら禍々しい黒いオーラを感じた。



見ると、桐原さんが眉間に深い皺を刻み私を睨みつけている。




「お前今、なんか物凄く失礼な妄想してないか?」



「いやいや、とんでもないです、キララ王子」



「絶対してんだろ!」




高校時代の桐原さん。ちょっと見てみたかったかも。