甘い恋じゃなかった。









今日の夕食は、傷みかけている人参を消費するためホワイトシチューにすることにした。



野菜をグツグツ煮込んでいると、ガチャリと玄関のドアが開く音。制服姿の愛良さんがリビングに入ってきた。



「あ、おかえりなさい」



「………」



安定の無視。ツンと澄ました表情で着替えるためだろう、さっさと脱衣場に入っていってしまった。




ていうか、桐原さんが帰ってくるまで二人きりか。それは少し、いやかなり、気まずいかも…。




はぁ、と本日何回目かわからないため息をついて、ホワイトシチューのルーの箱を開けようとしたときだった。




「手伝いましょうか」



「うえっ!?」




驚きすぎて変な声が出た。だって気付かないうちに、ラフなTシャツとスエット生地のズボンに着替えた愛良さんんが、私の手元を覗き込んでいるんだもん。




「て、手伝う…?」


「うん」



想定外の展開だ。さっきまで安定の無視だったのに、急に話しかけてきた上、手伝う、なんて。




「かして。これ、入れればいいんでしょ?」




答えあぐねている私に業を煮やした愛良さんが、ルーの箱を奪い取る。手際よくそれを割り入れながら「そういえば」と続けた。



「お風呂ってもう入れるの?」


「え?いや、まだ洗ってもいないけど」


「じゃぁ洗ってきて。私お風呂は夕食後すぐに入るのが習慣だから」


「あ、はい」




愛良さんに命じられるがまま私は浴室に向かった。



スポンジで浴槽をゴシゴシ擦りながら、はて、と思う。



なんか私より愛良さんの方がよっぽどこの家の主っぽくない…?6つも年下だというのに。