甘い恋じゃなかった。






「嘘です」



回し蹴りをくらう前に否定すると、「でしょ」と愛良さんから怒りのオーラが消えた。



「お兄は誰よりもイケメンなのに優しくて、いつも私のこと守ってくれた。
だから、そんなお兄を傷つけたあの女を、私は絶対に許さない」



淡々とそう話す愛良さんからは、先ほどのような激しさこそないものの、静かな怒りが伝わってくる。


愛良さん、桐原さんのこと大好きなんだなぁ。




「だから」



愛良さんが寝返りを打って、再び私に背を向けた。



「その家族のアンタのことも、絶対に許さない」



「……」



愛良さんの背中から伝わってくるのは拒絶。怒り。憎しみ。



このマンションに押しかけてきた日の桐原さんを思い出す。あの日の桐原さんは私を憎しみいっぱいの瞳で睨みつけていた。



一番傷ついたのは桐原さん。でも、そんな桐原さんを大事に思う家族も深く傷つけてしまった。




“ごめんなさい”




その言葉すら言う権利がないような気がして私は黙り込む。暫くして、愛良さんの穏やかな寝息が聞こえてきた。




…ごめんなさい。桐原さん。愛良さん。




お姉ちゃん…今、どこにいる?何を思ってる?