桐原さんの言葉に「役立たずな女!」とキッと私を睨みつける愛良さん。
「だよな~」と能天気な声でそれに同意している桐原さん。
その“償い”としてただ飯とただ宿を提供しているでしょうが!
そんな言葉が喉まで出かかったが、今度こそ回し蹴りをくらいそうなのでやめておいた。
「でもお兄、だからって逃げた婚約者の妹と同居するなんて普通じゃないよ。
せめて実家に…」
「戻らねーよ」
いつになく強い桐原さんの口調。
「でもっ…」
「愛良。俺がお前に何言われても、実家に戻ると思う?」
う、と愛良さんが言葉を詰まらせる。
「で、でもっ…この女は、お兄にあんな酷いことした奴の家族なんだよ!?わかってるの!?」
「うるせーな、別に愛良に関係ないだろ」
「関係あるよ!家族だもん!」
「うるさい」
「うるさくない!」
どんどんヒートアップしていく愛良さんの熱。
や、やばい。このままじゃ次は桐原さんにあの華麗な回し蹴りが炸裂するんじゃ…そしたらこの部屋メチャクチャになるんじゃ…!
「心配しないで!」
思わず兄妹喧嘩に口を挟んでいた。
二人の視線が私に集中する。
「あっあの!実は桐原さん、最近再就職したんですよ!なので桐原さん、実はすぐにでもここを出ていけます!ねぇ桐原さ…」
「出ていかねーよ」
え。
桐原さんがだるそうにお茶を飲みながら、バッサリそう言い放つ。
「な、なんで!?だってお金があれば、もうここにいる意味なんてないでしょう」
「だって俺、給料もらうつもりねーもん」
なんですと!?



