甘い恋じゃなかった。






思わずぶん殴りそうになったが、愛良さんの視線がより鋭いものになったのでやめた。


これはもう、とりあえず何か言うしかない!




「え、えっと…私は小鳥遊明里といいます」


「ふーん、あっそう。どうせお兄がイケメンだから無理やり転がりこんでるんでしょうけど、お兄はあなたみたいに色気のない―――



…小鳥遊?」



あ、やばい。


私は自分が口を滑らしたことに気付く。



「小鳥遊って…まさか小鳥遊栞里の」


「…妹です…」



ここまできたらもう正直に言うしかなかった。



愛良さんの瞳が驚きの色から、一気に怒りの色に変わる。




「しっ…信じられないっ!お兄にあんな酷いことしといてまたノコノコと現れるなんて…どういう神経してんの!?」



「え、えっと…私が現れたというか桐原さんが突然」



「黙って!」




立ち上がった愛良さんが、私に向かって勢いよく右手を振り上げた。


これは、平手打ちパート2―――



覚悟してグ、と目を閉じたとき




「…やめろ」



静かな声に目を開けると、桐原さんが愛良さんの右手をつかんで止めていた。



「お兄っでもっ!」


「いいから座れって」




そして有無を言わせぬ調子で愛良さんを床に座らせる。




「ホテル、クビになったことは知ってんだろ?
で、金ないからコイツの家に住んでんの」




おお…なんて端的な説明…



「でも、いくらお金ないからって、何でよりによってこんな女のとこ…!」



「栞里がどこにいるか聞き出そうと思ったんだよ。ま、結局何も知らないみたいだったけど」