甘い恋じゃなかった。






家に戻ると、玄関には桐原さんの突っかけサンダルが乱雑に脱ぎ捨てられていた。



だけど、部屋に桐原さんの気配はない。




「桐原さん…?」



ピタリと閉められた桐原さんの部屋のドア。



中からは物音一つしない。




もしかして、店長の作ったケーキがマズすぎて倒れてるとか!?(失礼)それともやっぱり、お腹壊して倒れてるとか!?(超失礼)



「桐原さ…「うるせぇ黙れ絶対開けんな」




思わずドアに手をかけようとした瞬間、中からそんな声が聞こえてきた。ドア越しでも分かる。なんだか物凄く、機嫌が悪い…。




「はーい…」



触らぬ神に祟りなし。


私は大人しくそこから離れた。



どうやら倒れているわけではなさそうなので大丈夫だろう。



でも、どうしてこんなに不機嫌なんだろう。



マズかったんだろうか、ミルフィーユ。




私はおいしいと思うんだけどな。



だからこそ、誰よりもおいしいケーキを作れる桐原さんに、食べて欲しかったんだけどな。