甘い恋じゃなかった。



くっ、と巻毛女が唇を噛み締めた。


「あんた…すっごいムカつくわ」


そして勢いよく右手を振り上げる。ヒィー!(2回目)ぶたれる!


きたる衝撃に備えて目を瞑ったけど、何の衝撃もない。


恐る恐る目を開けると、巻毛女が振り上げた拳を震わせていた。


「…あんたには痛い目見てもらうから。ワタル!」


ワタル、と呼ばれた男が近くにあったベンチから気怠そうに立ち上がる。


…え、誰?


「私の彼氏」


巻毛女が得意気に言った。



えぇーー!

色々と言葉にならない衝撃が私を襲う。


桐原さんは皆のものと言っときながら自分は彼氏持ち!?しかも同伴!?どういうこと!?


目を白黒させる私に、上下黒のスエット姿に銀髪の“ワタル”が近づいてくる。


私の目の前で立ち止まってニヤリと不気味に笑った。


ていうか君も今どういう心境でここへ!?


色々とワタルにも聞きたいことがあるがそんな時間はないらしい。


グイッとワタルが私の胸倉を乱暴に掴み上げた。


「え、あの、ちょっと待…」

「無理」


ワタルが大きく左手を振り上げる。


え、ちょ、待、暴力反た――――



「俺の女に触んじゃねぇ」


グイ、と後ろに思い切り引っ張られた。そして背中からスッポリと大きな温もりに包まれる。



…は?



後ろから首元にまわされた腕。まさか、と思いながら顔を上げると


「き、桐原さん!?」

「うっせ、わめくな」


桐原さんが顔をしかめて私を見下ろしていた。