物珍しそうに店内を眺めているお姉ちゃんをチラチラ気にしながら、店長が答える。


「キララくんなら買い出しに出かけてるよ?そろそろ帰ってくる頃だと思…」


カラン、コロン。



ジャスト・タイミング。


心地よい鐘の音と共に、両手を袋でいっぱいにした桐原さんが店内に入ってきた。



「師匠、ブルーベリーなんですがやっぱり今は旬が…」



顔を上げて、固まった。


お姉ちゃんを見た桐原さんの瞳が大きく見開かれる。



「……は?」


「きぃくん…突然ごめん。私…」


お姉ちゃんの言葉を無視して、桐原さんが真っすぐ歩いて、私の前に立った。


「おい」


声も瞳も尖ってる。体中から滲み出る威圧感。桐原さん、物凄く怒ってる。



「…どういうつもりだ」


「…お姉ちゃんが、桐原さんに話したいことが…」


「俺はない」




きっぱり言い切った。声がもう一つ低くなる。



「…関係ないって言ったろ」



そして冷たい視線だけ私に残すと、きびすを返して厨房へ入っていった。