甘い恋じゃなかった。





「うちは小学生の間は来てたんですけどね、サンタさん。もう、朝起きて枕元にプレゼントを見つけた時のあのワクワク感!あれはもう二度と味わえないんじゃないかって思います」


「ふーん?」



相変わらず理解出来ないとでも言いたげな相槌を打って、桐原さんが更にダウンコートの衿もとを引き上げた。



空を見上げて、今年もきっと大忙しであろうサンタクロースに想いを馳せる。



あーあ、大人になっても来てくれたらいいのにな、サンタさん。



「っておい、着いたけど」



桐原さんの声で我に返ると、目の前には見慣れたマンションが。

ボーッとしていて危うく行き過ごすところだった、危ない危ない。



「あ…送ってくれてありがとうございました」


足を止めてお礼を言う。


顔の半分以上がダウンコートに埋もれた桐原さんは、もはや目元しか見えていない。



「はやく入れよ」



くぐもった声で彼が促す。



「はい…じゃぁ」



あぁ、きっとこの瞬間、離れたくないな、なんて乙女なことを考えているのはきっと私だけだろう。



寒さで震えている桐原さんに早くしろとキレられる前に、そそくさとエントランスに続く階段を登ろうとした。その時、


「おい」


くぐもった声と共に引っ張られた腕。



気づいた時にはボスッと、今度は彼のダウンコートに私が埋もれていた。

ギュ、と背中に回された腕にキュンとする。



「俺だけか」


「え?」


「お前に触りたいのは俺だけかよ」



えっと…



桐原さんによって顔を押し付けられたまま、私は混乱する。


これ、ほんとにあの桐原さんが言うセリフ!?!?