「バカじゃないの!?」
今まで出したことのないような大きな声が出た。
怒りなのか憎しみなのか哀しみなのか、全部混ざり合ったものが行き場もなく私の中で渦を巻いている。
「信じられない。自分勝手にも程がある。それでも大人なの!?社会人なの!?桐原さんに、謝ったの!?謝りもしないで逃げるなんて…ありえない。最低」
お姉ちゃんは勢いよく捲したてる私を目を大きくして見ていた。
シン、と痛いくらいの沈黙が部屋に充満する。
「…ほんと、そう」
その沈黙を消え入りそうな声で破ったのはお姉ちゃんだった。
「全部、そう。明里の言う通り。
私は最低だよ。
最低だって分かってるから、今まで会いに来れなかった。どうしても」
小さい頃から社交的で、なんでもできて、みんなの人気者だったお姉ちゃん。
いつも自信に満ち溢れてて、堂々としてて。
そんなお姉ちゃんが、こんなに小さく見えたのは初めてだった。
でも今の私はどうしてもお姉ちゃんのことを許せないし、許したくもない。
「桐原さんに…会いにきたの?」
「…いや、違う。今日は明里に会いにきた。まさかきぃくんと一緒だとは思わなかったけど。
…付き合ってるの?」
「………うん」
「…そっか」
ざわざわする。
もうお姉ちゃんと桐原さんのことは過去のことだって分かってるのに。桐原さんももう自分には関係のない女だって、はっきり言ってたのに。
「…寝る」
私は宣言するように言って立ち上がった。
もう今日は、疲れた。
とんでもなく疲れた。



