「………え?」
「だから、離婚するかもしれなくて」
聞き返した私にもう一度同じことを繰り返すお姉ちゃん。
…聞き間違いじゃなかったんだ。
「えっと…お姉ちゃん?離婚っていうのは結婚してないと出来ないんだよ?」
「うん。だからしたの、結婚」
そう言ってお姉ちゃんが、よく芸能人が記者に囲まれてするそれのように、左手の指を揃えて、胸の前でかざした。
人差し指にキラリと光るもの。間違いなくそれだった。
「…えっと…ちょっと待って?」
私は額を抑えて目を瞑る。
人は驚きすぎるとリアクションすら取れなくなるということを知った。
「結婚…したの?誰と?」
「元同僚」
お姉ちゃんは以前、大手商社でバリバリの営業として働いていた。
「…いつ?」
「…きぃくんとの結婚がダメになって、そのすぐ後。旦那がニューヨーク支社に転勤することになってね、追いかけていったの。そのまま現地で」
…ダメだ。
想像以上の出来事に頭がついていかない。完全に、私の理解の範疇を超えている。
「あの…とりあえず一つ言いたいんだけど。
桐原さんとの結婚はダメになったんじゃない、お姉ちゃんがダメにしたの」
「…うん」
「桐原さんとの結婚式をバックれたのは、その元同僚の人を好きになったから?」
「……うん」
コクリと頷くお姉ちゃんに、沸々と、奥底からマグマみたいなドロドロしたものが湧き上がるのを感じた。
信じられない。こんな人が、私の姉なんて。



