「うわぁすごい。いい所だね。綺麗にしてるし」
ラグの上に座りお姉ちゃんが物珍しそうに部屋を見る。
そうか、そういえばお姉ちゃんがこの部屋に来るのは初めてだったななんて思いながら、私はキッチンでお茶を淹れるためのお湯を沸かした。
お姉ちゃんに会ったら色々聞きたいことや、言いたいことがある筈だった。
でも、いざこうしてその時が来てみると、突然すぎて心も頭も追いつかない。
とりあえず、お茶飲もう。お茶飲んで落ち着こう。
私はIHにかけたヤカンをじっと見つめながら、念じるように自分に言い聞かせた。
「この紅茶おいしい。ダージリン?」
マグカップを口に運んだお姉ちゃんが、一口飲むなり目を輝かせた。
「いや、アールグレイ」
「へぇ。明里昔から、紅茶とかケーキとか大好きだったもんねぇ」
のんびりそう言う姉の口調。懐かしいな、この感じ。
と思うのと同時に、我が姉ながら不思議だった。
どうしてこの人は、こんなにいつも通りなんだろう。こっちはさっきから動揺しっぱなしだというのに。
「あのさ、お姉ちゃん」
「ん?」
思い切って本題に入ることにする。
「どうして急に…現れたの?」
いや違う。もっと今までどこにいたのかとか、何でちゃんと連絡を寄越さなかったのかとか、そもそも何であんなこと、したのかとか。
他に聞きたいことが沢山あった筈なのに、私の口から出てきたのはそんな疑問だった。
「…あぁ」
マグカップを両手で握りしめたお姉ちゃんが、ほぅとため息をつく。
「実は…離婚、するかもしれなくて」
……は?



