甘い恋じゃなかった。





なんと、デート前にしていた妄想が現実のものになろうとは…!!



衝撃を受けて固まる私に、桐原さんが怪訝な顔をする。



「来るの、来ないの、どっち」


「あ、えっと、でも、明日も仕事だし…」



自分の中では答えなんて一択なのに、そんな言い訳じみたことを言ってしまう私は相当面倒くさい女だ。


目を細めた桐原さんが、「あっそ」と私の右手から左手を引き抜こうとした。



「いや!!」



ガシッと渾身の力で桐原さんの手を両手でつかんだのは、ほとんど本能。



「…行きます」

「バカ」


そ、と私の手を離した桐原さんが、そのまま肩を抱いて引き寄せた。



「帰すわけねぇだろ」



耳元で囁くように言われて、体の奥の方がゾク、とする。


胸キュン、なんて可愛いもんじゃない。胸ゾクだ。


この人に何度心臓止められたら気が済むんだろう。



自分ちの方角に背を向けて歩き出す。



あ、でもメイク落としとかコンタクトととか…コンビニに寄らないと。



なんて頭の片隅でボンヤリ思ったときだった。



「…明里?」



聞き覚えのある声に呼ばれた。いや、でもそれは決して聞こえるはずのない声で、そんな筈はない。


まさか、と思いながらゆっくりと振り向いて。


そこにいるはずのない人物の姿に、目を疑った。


…え。嘘。なんで。なんでここに?




「お姉…ちゃん…?」