甘い恋じゃなかった。




「あっ桐原さん!次はココ入りましょう!!」


そのとき、廃病院をモチーフにしたお化け屋敷が目の前に!お化け屋敷にも絶対に入りたいと思っていた私は、すかさず桐原さんのTシャツの裾を引っ張って、お化け屋敷を指さした。


「………」


振り向いた桐原さんの顔が、ピクリとひきつった。


ん?もしかして。



「桐原さん…お化け屋敷も苦手なんですか?」

「…は?ち、ちげーよ。こんな子供騙し怖いわけがない」

「ジェットコースター乗る前も同じようなこと言ってましたけど」

「ばっ、お、お前!俺をバカにするなよ!?」


そして率先して列の最後尾に並ぶ桐原さん。なんだかデジャヴだ。


「あのー…本当に大丈夫ですか?
これ出てくるまで40分くらいかかるらしいですけど」

「よんじゅっ…!?
べ、別に大したことない。ただの散歩だろ?散歩」






―――一時間後。


「だから、何で強がるんですか」

「…うるさい、黙れ…」


ベンチに横たわる桐原さんの声が、心なしか掠れているような気する。きっと叫び過ぎたせいだろう。


「誰ですか?散歩とか言ってたのは」

「聞いてなかったんだよ!まさかあんなに追いかけてくるなんて…」


そのときのことを思い出したのだろうか。桐原さんの顔が恐怖で歪んだ。


「スリル満点で楽しかったじゃないですかぁ!」

「お前…おかしいぞ。恐怖心という人間にとって大事な感情が欠落している…」


まるでお化けを見るような眼差しを私に向けてくる桐原さん。


「それにしても知りませんでした。まさか桐原さんがこんなに怖がりだったとは」

「怖がり言うな!」