甘い恋じゃなかった。



それからベンチでしばらく休憩し、フードコートで昼食をとった頃には、桐原さんはすっかり回復していた。


「あー、ラーメンおいしかったぁ」


フードコートから出て、先程食べたばかりの醤油ラーメンを思い出しながらそんな独り言を言う。


「美味いわけないだろ、あんな普通の醤油ラーメンが」


自分もさっきまでごくごく普通のカツ丼を「うまい」と連呼しながら食べていたくせに。棚上げ男が偉そうにそう言った。


「まぁ確かに普通のラーメンでしたけど、なんでしょうねぇ。こういう所で食べると物凄く美味しく感じるんですよね」

「…そうかぁ?」


料理自体の味ももちろん大事だけど、どこで食べるか、誰と食べるかって、食事においてすごく最高のスパイスだと思う。


誰と食べるか、か…


チラリと、横目で隣を歩く桐原さんを覗き込んだ。



…やっぱり、かっこいいなぁ。



遊園地でも、常に女子からの熱視線がどこからか注がれている気がする。こんなにダサいTシャツを着ているというのに。


私もしかして、ものすごく分相応な恋をしているんじゃないだろうか。



「何見とれてんだよ?」


私の視線に気づいた桐原さんが、意地悪く笑ってそう言った。慌てて視線を彼から前に戻す。


「べ、別に?見とれてなんかいませんが!」

「嘘つけ。見とれてただろ、思いっきり」

「自意識過剰ですよ!?」

「過剰じゃねーよ、適度だろ」


くっ…この男。さてはイケメンだということを自覚しているな。可愛くない!