甘い恋じゃなかった。




ソファから降りて、ラグの上に胡座をかく桐原さん。

身を起こして座り直すと、桐原さんの形のいいつむじが見えた。



「…俺は、栞里が好きだった」



静かな口調で、桐原さんが話し始める。



「逃げられたのに、その後もずっとアイツのことで頭いっぱいで。憎しみなのか恋情なのか、もうゴッチャだったけど。でもやっぱり好きなんだろうって、そう思ってた」



…分かっていたことだけど、やっぱりこう改めて聞くと、ショックだった。



でも、お姉ちゃんのことが好きなら何で私に…



「でも」



言葉を区切って、桐原さんが後ろのソファに座る私を見上げる。



「アイツに…牛奥にお前のこと弄ぶなって言われたとき、はじめて気付いた。
俺もうずっと、栞里のことなんて考えてなかった」




…桐原さんの真剣な瞳に。
吸い込まれそうだ。




「お前が牛奥に告白されて舞い上がってんの見てるとイライラして、

俺がからかうとすぐ顔赤くしたり怒ったり、なんかそういうのがすげー、嬉しかった」



「…小学生ですか」



「うるせぇな」




乱暴な言葉とは裏腹に、桐原さんがわたしの手を握って、優しく親指で手の甲を撫でる。