甘い恋じゃなかった。





「んっ…」


私の舌を絡め取るように動く舌に、思わず声が漏れてしまう。

私の声に反応するように、桐原さんの私の肩に置いた手に力がこもった。



一通り口内を味わい尽くした後、桐原さんがゆっくりと唇をはなす。



息も絶え絶えの私を見てふん、とバカにしたように笑う桐原さんは、随分と余裕そうだ。



「余裕ねぇな」


「う…うるさいです」


「来いよ」




まるで自分ちかのようにそう言って、桐原さんが私の腕を引っ張り中に上がろうとした。



「ちょ、待って靴」



慌ててパンプスをその場に脱ぎ落とす。




ドサッ…




リビングに着いた途端、ソファに押し倒され、真上から桐原さんがそんな私を見下ろした。



「…顔真っ赤」


「…う、うるさいです!」


「お前さっきからそればっかだな」




ゆっくりと近付いてくる桐原さんの顔…



の、唇に手を当て阻止すると、あからさまに不機嫌な顔になった。



「なんだよ」


「あ、あの、まだその前に、することあると思うんですけど」


「は?」


「ていうか、言うことあると思うんですけど」

「言うこと?」


「桐原さん私のこと…どう思ってるんですか?」



そうなのだ。

彼からまだ、何も肝心な言葉を貰っていない。


失恋だどーのと騒いでいたらいきなりキスされたのだ。


ひょっとして?と期待してしまう。これが勘違いだったら最高に恥ずかし過ぎて死ねる。



「あー…」



桐原さんはバツの悪そうに頭をガシガシかくと、私の上から退いた。



「…悪い。余裕ないのは俺だったな」