今思えば色々なことがあった。
早く出ていけばいいのに、と毎夜寝る前に呟いていた毎日。
桐原さんの妹、愛良ちゃんが押しかけてきたこともあった。
愛良ちゃんの試合を全力で応援する桐原さんが意外で、少しだけ可愛く思えた。
2人で夏祭りに行ったこともあったっけ。
店長に言いつけられ、レモンを山ほど買ったときはしんどかったなぁ。
色々あったけど、でも今は、一人で。
そっか。もう桐原さんとあんな風に過ごすことは、ないんだ。
ツ、頰を伝う感触がした。
まさか、と思った時にはポタ、とショコラフランボワーズの隣に雫が落ちる。
…なんで。なんで泣いてるの私!?
慌てて目をこする。でも一度溢れた涙は次々と、それはもう次々と洪水のように溢れてくる。
最悪だ。マスカラ落ちるし。何よりこんな、パティスリーで一人泣くとか、痛すぎる。早く泣き止め私。誰かに気付かれる前に。
早く。
私の頭ん中から出て行ってよ、桐原さん。じゃないと、涙が止まらない。



