甘い恋じゃなかった。





休日のボヌールは相変わらず混んでいたが、運良くカウンターの一つに座ることが出来た。

運ばれてきた三つのケーキに、ほぅ、とため息が漏れる。


カボチャペーストをモンブラン風にしたカボチャのタルト、濃厚な風味のベイクドチーズケーキ、そして、看板メニューでもある、ショコラフランボワーズ。


「いただきま〜す」


小声で言って、まずはベイクドチーズケーキから食べ始めることにする。

ボヌールに来るのは久しぶりだ。やっぱり、美味しい。美味しいケーキを食べるとワクワクする。

とても三つじゃ足りない。

そんなこと言ったら、桐原さんにまた「食い過ぎだ」って、呆れた顔で言われるんだろうなぁ。


ベイクドチーズケーキを半分ほど食べたところで、今度はショコラフランボワーズに手をつける。


そういえば、桐原さんが私の家に押しかけてきたあの日。

あの日は、仕事帰りに運良くいつもは売り切れてしまっているショコラフランボワーズをゲットできて、ルンルンで帰ったんだった。


桐原さんに肩をつかまれた拍子に落として、結局食べられなかった悲しみは今でも鮮明に覚えている。