甘い恋じゃなかった。




「ごめん」


業務終了後、牛奥に時間を作って欲しいと頼んだところ、牛奥はいつも三人でよく集まる居酒屋を指定してきた。

ガヤガヤとした喧噪の中。私は勢いよく頭を下げる。


「私牛奥とは付き合えない」

「…やっぱり俺のこと、同期以上には見れない?」

「…うん。私にとって牛奥は大事な同期で…それに…」


次の言葉を言うのは、なんだかすごく勇気がいった。


「私他に好きな人がいるから」

「………」


何も言わない牛奥。

恐る恐る顔をあげると、まるで私がそう言うのを分かっていたかのような冷静さで、枝豆をつまんでいた。


「…牛奥?」

「うん。知ってたよ…でも、そっか。やっと気づいたんだな。気づいちまったんだな…」


はぁ、と憂いに満ちたため息が居酒屋の喧噪に紛れて消えていく。


「桐原さんだろ?」

「……うん」


コクリと頷く。

遅れて、顔がカッと熱くなった。


やだ。なんだかすごく、恥ずかしい。