甘い恋じゃなかった。





業務終了後。私はまたミルフィーユを訪れていた。


「セーフ…!」


閉店ギリギリに駆け込んだ私を見て、店内の床を掃除していた桐原さんがあからさまに嫌そうな顔をする。


「お前…ラストオーダーの時間とっくに過ぎてんぞ」

「や…その、今日は桐原さんに言いたいことがあって」

「…俺はまだ仕事中だから」

「じゃ、じゃぁ仕事終わったら話せますか?」

「………」

「無視ですか!!」



という私の言葉も無視して、桐原さんが私から逃げるように厨房へ引き上げようとする。



ちょ…!



「待って下さいこの俺様パティシエ!!」



ピク、と桐原さんが反応し歩みを止めた。そしてまさか、といった感じで振り向く。



「…まさかそれは俺のことか?」


「他に誰がいるっていうんですか」


「…俺様とは」


「少女マンガとかによくいる、自己中でわがままで横暴なのにそれが大抵の場合イケメン設定でカバーされるっていうアレです」


「…それのどこが俺なんだ」


「全部当てはまってるでしょうが!」



自己中でわがままで横暴。その上イケメンってところまで全て当てはまっているでしょうが。