甘い恋じゃなかった。





「もう…余計なこと言わないで、頼むから」


「桐原さんはまだお前の姉ちゃんが好きだよ」


今度こそ資料室を出て行こうとした私を追いかけてきた牛奥の声。



「…は?」


「俺、言ったんだ。小鳥遊の姉ちゃんのこと、まだ好きなら小鳥遊から離れろって。

それで離れてったんだとしたら…つまり、そういうことだろ?」



桐原さんが…好き。
お姉ちゃんのこと。



「別に…知ってたよ、そんなの」


「…小鳥遊?」


「だって桐原さんがうちに来た目的だって、はじめはお姉ちゃん目的で来たんだもん」



そう。そもそもお姉ちゃんと桐原さんは恋人同士で、結婚を約束した仲で…



「…知ってたよ」


「じゃぁ」



牛奥が泣きそうな顔をしている。



「何でそんな泣きそうな顔してんだよ…」




それはアンタの方でしょ。


それは言葉にすることが出来ずに、私は資料室を出た。



バカみたいだ。

バカみたい。


私のためにわざわざそんなことを桐原さんに言いに行った牛奥も、真に受けて出ていった桐原さんも、


…知っていた事実を改めて突きつけられて、一丁前にショックを受けている私も。