甘い恋じゃなかった。






そこからはおいしいお酒と料理を食べながら、他愛もないことを話して過ごした。



牛奥に莉央と西山営業部長のことを話すと、牛奥は大きく目を見開いて「はぁあ!?」と素っ頓狂な声を出していた。うん、予想通りの反応だ。



牛奥との話は尽きない。

話のほとんどが仕事のこととだけど、牛奥の今手掛けている案件のことを聞くのも面白いし、会社のあの人がどうとか、あの怖い上司が実は…とか、おいしいお酒も手伝って話が弾む。




「あぁ、よかった。牛奥と同期で」



なんとなくポロ、とそんな言葉が零れた。これは私の本心だ。



「莉央もだけど、会社に仲良い同期がいるって、すごく心強いよね。
はじめの頃は毎日のように先輩に怒られてて、それこそ牛奥とか莉央がいなかったら私、やめてたかもしれないし」



「何言ってんだよ。小鳥遊は大丈夫だろー、案外根性あるし」




照れ臭そうにグラスを口に運ぶ牛奥。




「俺の方こそ。覚えてるか?一年目の夏、プレゼンのデータが入ったUSBをプレゼン前日に壊して、小鳥遊に徹夜で手伝ってもらったやつ」



「あー、あれね!もちろん覚えてるよ。あの時は大変だったけど、今思うとなんか楽しかったかも。牛奥には悪いけど」



「俺は寿命五年は縮んだ気したけどな。
あの時は本当にサンキューな」



「なに、今更改まって。同期なんだし当然のことじゃん?」




なんだか私も照れ臭くなってきて、それを誤魔化すようにサーモンのカルパッチョを口に運ぶ。


だけど、その間も牛奥の強い視線を感じて、私は堪えきれず顔を上げた。




「なに、人の顔じっと見て。なんか付いてる?」


「いや…俺。ずっと言おうと思ってたんだけど。俺、あの時から…」








「ラストオーダーの時間になりますが、どうされますか?」





牛奥の瞳に熱がこもった時、店員さんがラストオーダーを取りに来た。



もうこんな時間か。




スマホで時間を確認すると、もう店に入ってから結構な時間が経過していた。