甘い恋じゃなかった。




翌日。朝。


わたしは牛奥が所属する営業部の周辺をウロウロしていた。


もうそろそろ、牛奥が出勤してくるはずである。


会ったらとりあえず、何で避けてるの?って聞こう。そして、あとは、…なんて言おう?



しまった。

牛奥を捕まえることに必死で、何を話そうか考えるのを忘れていた。


痛恨のミス!!とりあえず出直そう!とクルリと踵を返したときだった。



「…ここで何してんの?小鳥遊」


「おわ!!」




真後ろに、怪訝そうな顔した牛奥が立っていた。



「え、えっと…トイレ?」


「…はぁ?」




やばい。下手すぎる。嘘が下手すぎるぞ私。


トイレなんて逆方向だし、牛奥ものすごく変な顔してるし。



「…というのは嘘で、えと…話したいんだけど。牛奥と」



真っ直ぐ牛奥を見つめて、正直に伝えると、ちょっと彼のクルリとした目が細まった。



「…わかった。
でもこれから急ぎの会議あるから後でな。またラインする」


「あ、うん!分かった!
ごめん忙しいところ」


「いーや、全然?」




二、と子犬みたいな顔で笑う牛奥は、いつもと同じに見えて少しホッとした。