甘い恋じゃなかった。





私の背中に回された彼の手に、ギュ、と力がこもる。

だけどそれは一瞬のことで、桐原さんはすぐに私の肩を押し、距離を取った。



呆然とする私をよそに、まるで何事もなかったかのように机に向き直る桐原さん。




「残りはまた明日にするか」



「あ…はい。そうですね…」



「…お前、今日俺の部屋で寝ろよ」



「あ…はい、そうです…え!?」




桐原さんの言葉に、ボンヤリしていた私の脳が覚醒した。


それってつまり、つまりだけど、一緒にっ…





「俺はリビングで寝るから」




あ…なんだ。そういうことね。



すっかり添い寝している光景を思い描いてしまったことが猛烈に恥ずかしい。



でも…




「…何で?」




なぜ急にそんなことをするのか、よく意味が分からない。



「何でって…」



桐原さんが少し眉をひそめて私を見る。




暫しの沈黙があって。




「…何でもだよ!」




横暴にそう言って、立ち上がると洗面所の方に行ってしまった。