甘い恋じゃなかった。






だけど今は桐原さんに売られた喧嘩を買っている場合ではない。彼の気が変わらないうちに、コンビニスイーツを有り難く頂かなければ。



私は迷った末、安納芋のクレープを手に取った。



袋を開けてさっそく口に運ぶ。



「おいし〜い…」


「これもうまいぞ」



桐原さんが見せてきたのは、三種のフルーツのタルト。

彩りよくのせられたフルーツがとても綺麗だ。



「お、おいしそう…!」



食べたい!という私の思いが顔に出まくっていたのだろう。

桐原さんが「食う?」と食べかけのタルトを私に差し出してきた。



「食います!!」



即答して、あ、と大口開けて齧りつこうとした瞬間。



はたと気付いた。




これってもしや。


間接キス…!?




「ぶっ…」




大口を開けたまま固まっている私を見て、桐原さんが堪え切れない、というように吹き出す。




恥ずかしい!!


間接キスを気にするなんて中学生じゃあるまいし!!牛奥とだっていつも平気にお酒の回し飲みとかしてるじゃないか!!




「く、食います!!」




私は気を取り直して、まるで一大決心をするかのようにそう宣言し、タルトにかぶりついた。




桐原さんはそんな私を見て肩を震わせて笑っている。




「ちょ、そんなに笑わなくても!?」



「や、だってガキかよ?」




ていうか桐原さんて、いつからこんなに笑うようになったんだっけ。

この家に来たばかりの頃は、いつも仏頂面で不機嫌そうで、ニコリともしなかったのに。



…まぁ今もこんなに笑っているのは、決まって私をバカにしている時だけなんですけどね。