甘い恋じゃなかった。





牛奥が◯◯町に住んでいることは知っていたが、それだけだ。遊びに行ったこともないし、詳しい場所は全く知らない。



牛奥は聞いても「んぁ〜?」だの「ヘタレじゃねぇ…」を繰り返すばかりで使い物にならないし、仕方なく私は牛奥のカバンを漁る。




見つかった財布を開いて、愕然とした。




ない。



免許証も保険証も、何もないっ!
あるのは焼肉屋のポイントカードだとかカラオケのクーポンだとか、そんなのばかり。



こんな役立たずな財布ある!?

この人社会人だよね!?




月曜日、会社で会ったらこっぴどく説教してやろうと誓ったところで、う、と牛奥が急に口を抑えた。



…嫌な予感がする。



「牛奥、もしかして…」



「…吐きそう」




やっぱりー!!





「ちょっ、やめてよ牛奥、がんばって!」



私の必死の応援も虚しく、「うっ…」とえづき始める牛奥。



運転席から、ミラー越しにギロリと運転手の目が光る!



…なんと、奇跡的にここから私の家までは、めちゃくちゃ近い。…仕方がない。



「すみません、止めてください!」