甘い恋じゃなかった。





家の方面だと莉央と牛奥が同じ方面で、私は真逆なので、二人が一緒にタクシーに乗り、私は一人で帰るのが通常の流れだ。



だから当然今日もそうだと思っていた。



足元がおぼつかない牛奥に肩を貸し、なんとかタクシーに押し込んだところで、ん、と莉央にも乗るように促す。


近づいてきた莉央に、


「じゃぁまた…」



会社で。と言葉を続けようとしたのに。



ドンッと強い力で莉央に押され、私は雪崩れ込むように牛奥の隣に座りこんだ。



え、なに、莉央酔ってるの!?



慌てて出ようとしたが、莉央のヒールが私が降りるのを阻止する。



見上げると、全く酔っていない様子の莉央が満面の笑みを浮かべていた。




「牛奥、貸し1、だからね」



「はぁ?なんの話…」



「じゃぁ明里後はよろしく〜」



「え!?ちょっ!!」




待って!!と言う前に扉が勢いよくしまる。



音もなく走り出したタクシー。ヒラヒラと手を振る莉央がどんどん遠ざかっていく。




「お客さん、どこまで?」




戸惑う私に、運転手のおじさんがぶっきらぼうに聞いてくる。



ていうか行き先聞いてから走り出せよ!!



と思ったが見ず知らずの人にいきなり文句を言うほどの度胸はまだ、私にはなかった。



莉央がどういうつもりかは全く分からないが、こういう状況になってしまったからには仕方ない。



「◯◯町方面で…」




私はため息混じりにそう告げた。